HEMS(ヘムス)とは?
HEMSとはホームエネルギーマネージメントシステム(Home Energy Management System)を略したもので、「ヘムス」と発音します。
今までは、電力会社から送られてくる電気を何気なく使っていたのですが、生活に不可欠なものとなった電気の需要は益々多くなってきているため、電気の有効利用を行うためにも、私たちがどれくらい電気エネルギーを消費しているのかを知る事が重要であると考えるようになりました。
そこで、家電を含めた電気設備やガス、水道などの人の生活に必要なエネルギーを測定してデータで見える化して常に使用量を意識できるようにしました。これがHEMSです。家庭内に「スマートメーター」を設置し、モニタやスマートフォンで現在までの電気の使用量を常に確認することができます。
データ化したものは家の外からでも見えるようにインターネットなどに接続され、外出先からスマートフォンなどで確認でき、電源のON・OFFなども管理できるようにできます。
これにより、無駄な電気の利用を抑え、よく使う時間など、各家庭の生活リズムなどを記録して、蓄電池と併せてピーク時の電力を上手に利用する自動制御なっども行う事ができるようになっています。
HEMSの普及がなぜ求められているのか
日本は常にエネルギー確保の問題を抱えており、2011年の東日本大震災以降、重大な問題になってきています。2021年1月には日本海側で厳しい寒さを迎え、電力量が足りなくなり、電力市場での電力価格が高騰しました。
日常私たちが生活しているとエネルギー不足を体感することがあまりありませんが、様々な形で私たちの生活に影を落とし始めています。
電気代は2010年に比べ20%以上値上がりしている
気づいてい居る人も多いと思いますが、電気代は2010年の時と比べて20%以上も値上がりしています。電力小売りの自由化などを行い、競争力を高くして電気代を下げるようにしてもこのように値上がりを続け、今後も値上がりが予想されています。
国家規模で新しいエネルギー確保を進める一方で、私たち一般消費者の省エネへの努力もとても重要になってきます。HEMS導入は私たちができるエネルギー削減に大きく貢献できるシステムになります。
人々の暮らしが豊かになっていくにつれてエネルギー需要は益々増えていきます。電気代が高くなるだけでなく、エネルギーが足りなくなるような状態は絶対に防がなければなりません。
では、なぜ電気料金が値上がりしているのか?
日本の電力自給率は先進国でもとても低く、2018年の調べではたった11%しかありません。これは何を意味しているかというと、残りの90%近くは外国からの輸入資源で国内の電力を作っているという事になります。
下のグラフは日本の電源構成です。2011年の震災前には化石燃料での電源確保が65%程度だったのが、2018年には77%程度となっています。震災前まではクリーンエネルギーとして原子力発電を拡大してきたわが国ですが、震災後その安全神話が崩れ、化石燃料に頼る形になりました。
化石燃料の代表格である石油、石炭、天然ガスなどは日本では殆ど取れないため、これら燃料の殆どを海外からの輸入にたよっています。石炭や天然ガスの多くはオーストラリアから、石油はサウジアラビアやUAEなどの中東諸国から輸入しています。
これら価格は国同士の関係や地球環境が安定している時は良いですが、不安定になれば当然簡単には手に入らなくなります。
例えば中東からの輸入に頼っている原油については、その海上輸送路で海賊などに攻撃を受けるなどの問題が発生したりしています。また新型コロナウイルス感染症などの拡大も物資の輸送に大きな影響を及ぼしています。
自国でエネルギーが確保できないという事はこのように諸外国との関係や地質学的リスクなどに大きく左右されてしまうのです。
二酸化炭素排出量の問題
更に二酸化炭素などの温室効果ガスによる地球環境への影響も大きな問題です。化石燃料中心の発電になれば、それは当然二酸化炭素排出量の増加にもつながります。
日本は2030年までに温室効果ガスの排出量を2013年比で26%削減するという目標を世界に発信しています。
私たちが電力をより上手に利用することで、電気の使用量を抑えられれば二酸化炭素排出量の削減にも多く寄与できるということになります。
今後のHEMS推進の動き
最近ではZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス:Net Zero Energy House)という住宅構想への取組へも進み、高効率な住宅を推進することで、年間のエネルギー消費量の収支をゼロにしようともしています。
このようにHEMSをはじめ、個々の住宅でも省エネの動きが本格化しています。2016年4月からはじまった電力の自由化以降、今後日本はどのような計画があるかまとめてみました。
2020年より省エネ基準住宅の義務化
先にも述べたZEHという住宅構想では、ネット・ゼロ・エネルギーハウスとしてHEMSなどを導入し、省エネ効果の高い住宅設備や家電によって最小限のエネルギー利用で生活できるような家づくりを目指しています。太陽光パネルや蓄電池も搭載して省エネだけでなくエネルギーの生産と保管もおこなっていこうというものです。
ZEH実現には、まだまだ数多くの研究が必要ですが、現在あるテクノロジーで実現は可能なのものになっています。あとはそれらをうまく住宅に適用できれば、ネット・ゼロ・エネルギーが実現できるでしょう。
2024年全家庭にスマートメーター設置完了
スマートメーターは電気の使用量を見るための電力メーターですが、従来のものと違うところは通信機能を備えているところです。これにより、検針員がメーターを読んで電気料金などの請求が発生していたところを、各家庭に検針員が訪問することなく電力の使用量を計ることができるようになりました。
これは、遠隔地からの確認が出来るようになっただけでなく、電力小売自由化により、電力事業者の変更も簡単にできるようになったという事になります。自由化により電力会社を変更した家庭は既にスマートメーターになっているはずです。これを2024年までに全国で完了しようという事です。
2030年にはHEMSを全世帯に
2030年の日本の総世帯数はおよそ5,100万世帯と予想されていますが、日本政府としてはこの年までにすべての世帯にHEMSもしくはそれと同等の機能を有する省エネの為の設備を普及させたいと考えています。
これは2030年までに温室効果ガスを26%削減させるという目標としてもとても重要で、なによりも一般市民への節電意識の啓蒙につながるからです。
HEMSのまとめ
HEMSは一般家庭に導入する省エネのためのマネージメントシステムです。現在国内外のメーカーから様々なシステムがリリースされていますが、その普及率は3%にも満たないといわれています。それは、今現在のHEMSがオール電化を中心とした電力エネルギーのマネジメントだけになっているからです。
日本の過程ではまだガスや灯油などを使っている家も多くあります。自動車はまだ圧倒的にガソリン車が多く、ハイブリット車の普及率も2019年の段階で22%となっています。こちらも日本政府は2050年までに100%電気自動車にするという目標を掲げていますが、HEMSはこの部分にも関わってきます。
また、メーカーが変わるとシステムを大きく入れ替えないといけなくなるため、国内外でも統一して利用できる規格が必要になります。
課題も多いHEMSですが、私たちができる省エネであることには間違いありません。