再生可能エネルギー利用を促進させる目的で新会社設立
2050年のカーボンニュートラルに向けては、様々な業界で取り組みがなされている中、電力利用については再生可能エネルギーへのシフトが重要になってきます。しかしながら、一般消費者や産業界での再生可能エネルギー利用へのシフトはコスト面などでメリットが出ないため、あまり興味が向いていないというのが実際のところです。
このような状況を打開すべく、三菱UFJファイナンシャルグループの三菱UFJ銀行は、再生可能エネルギーに投資するファンドの創設に向けた新会社「Zエナジー株式会社」をコアパートナーであるNTTアノードエナジー、東京ガスらと共に9月1日に設立、他にも三菱重工業、東京海上日動火災保険、ゆうちょ銀行、常陽銀行、百五銀行、三菱総合研究所の6社を合わせた9社が協力体制を築いてファンドの運営支援を行い、同時に株主にもなっています。
今回のファンド設立にあたり、三菱UFJファイナンシャルグループが過去に培ってきた再エネ分野への投資などを精査し、自立した再エネ市場構築を目指すことが重要であるとの認識を強めています。これは、再エネの電力を安定して供給するために、太陽光や風力などを活用した電力の生産から、効率的な供給で消費者が利用するところまでのすべてをトータルでサポートする形となり、今回のパートーナー9社はそれぞれの知見をもった企業であるという事が言えます。
現在は再生可能エネルギーの最有力として稼働している太陽光発電の、FIT(固定価格買い取り制度)案件への投資を検討しているようで、10年以内には個人投資家なども取り込んだ3000億円規模のファンド運営により、再生可能エネルギーの生産から供給まで一貫した普及体制を構築していくとのことです。
コスト面でのメリットはあるか?
現在は火力発電による電力獲得が中心の日本の現状では、その燃料としての石炭と原油は殆ど輸入であるため、これらの高騰が起こっている現状を見ると、電力の価格は今後も上昇すると考えられます。日本には現在多くの電力小売業者が存在しますが、多くのプランが従来の電力を電力市場から購入し、その市場価格に上乗せする形で消費者に販売しています。
東電などの主要電力会社が販売していた従来の価格よりは小売価格が安くはなっているものの、電力市場価格が上昇すれば、もちろん小売価格は上昇します。需要と供給のバランスにより電力価格は変動していますが、昨年の電力需給量の増加により、その変動部分を吸収できずに倒産した電力小売業者もあり、すでに値上げを発表しているところもあるようです。また、石炭・原油の価格上昇が続けば、当然火力発電による電力供給の価格も上がり、電力市場価格は底上げされてしまいます。
一方で、再生可能エネルギーを利用した電力は他のコストや付加価値分が上乗せされているため、通常の電力より高い傾向になります。そのため消費者が興味を示さずにいるわけです。今回の取り組みで消費者の注目を集めるためには、コスト面で大幅な削減が見込めない限り、新電力、再生可能エネルギーへの切り替えは進むとは思えません。
すでに阪神大震災から20%程度上昇している電気料金が、元の価格に戻り、かつ震災以前より安くなるようなインパクトを期待したいところです。
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