2020年1月6日に厚生労働省から第一報が発表
日本で政府が正式に新型コロナウイルスについての発表を行ったのは2020年1月6日の第一報「中華人民共和国湖北省武漢市における原因不明の肺炎の発生について」です。
発生状況として、2019年12月12日~29日の間に国外で59例を確認しうち7例が重症化しているという発表でした。この時はヒト~ヒトへの感染が明らかになっておらず、医療従事者への感染も確認されていませんでした。
感染者の多くが武漢の海鮮市場(華南海鮮城)と関連していたため、この場所が発生場所として有力視されました。
WHO(世界保健機構)は1月7日の段階でこの原因不明の肺炎に対し、暫定的に2019-nCoVという呼び名を付け、その後2月11日にCOVID-19を正式な呼び名としました。
新型コロナウイルスは2019年11月時点で武漢市で発生が確認され、12月中旬くらいから感染の拡大が起こったとされています。
日本国内の1例目の発生
1月14日、厚生労働省は神奈川県内の30代男性が新型コロナウイルスに感染したと発表しました。中国の武漢市に滞在し、1月3日から発熱があり、1月6日帰国の時点で医療機関を受診しその後の検査で新型コロナウイルスの陽性判定が出され国内の一例目として報告されました。症状は軽く、1月15日には退院しました。
ここからはほぼ毎日新型コロナウイルスの感染例が報告されることになります。
症例が発表された事例の全てが中国湖南省に滞在していた、もしくは湖南省から来た人と接触履歴のあるものでした。
クルーズ船の事案により多くの日本人が知る事になる
2020年1月20日、鹿児島、香港、ベトナム、台湾、沖縄をクルーズする「ダイヤモンドプリンセス号」が横浜港を出発しました。同船は2月3日に横浜に帰港しましたが、途中1月25日に香港で下船した乗客が咳の症状が出て、1月30日から発熱し、2月1日に新型コロナウイルス陽性である事が判明しました。これに伴い、日本政府は帰港したクルーズ船からの乗客の下船を許可せず、2月3日から2日間乗客全員の検査を開始、2月5日には新型コロナウイルス陽性者が確認されたことから乗客2,666名と乗員1,045名に対して14日間の検疫を開始しました。
厚生労働省は2月5日の第1報で検査結果が31名のうち10名が陽性であると発表。ここから毎日マスコミによりクルーズ船の様子がテレビに映し出されることになりました。翌日2月6日の第2報では171名のうち新たに41名の陽性が報告されました。
2月5日から陽性反応がでた乗客を感染症病棟を有する医療機関へ搬送が開始されました。2月20日にはクルーズ船の乗客で陽性反応が出た80台の男女2名の死亡が確認されました。男性は11日に、女性は12日に医療機関へ搬送されていました。
2月22日、乗客の一部が下船を開始しました。しかしながら陽性患者との接触が無くなった日から14日間を観察するため、埼玉県和光市の税務大学校舎での隔離が行われ、PCR検査での陰性を確認後帰宅できるという形になりました。同27日には乗員の下船が開始され、乗客と同様の処置となりました。
クルーズ船に関しては3月15日までで全ての乗客・乗員に対するフォローアップが完了しましたが、4月15日までにクルーズ船関連での死亡者数は13名となりました。
チャーター機による日本人の帰還
日本政府は、1月27日、連日の新型コロナウイルス感染者の増加を見て、発生場所とされる武漢市に残る日本人を帰還させるためにチャーター便を運航する事を決定しました。
1月29日には武漢から206名、翌30日にも第2便で210名の日本人が帰国しました。同31日にも続けた第3便で145人が帰国しました。
チャーター機による帰国希望者の増加に伴い2月7日には更に第4便として198名の日本人、中国人、台湾人が帰国、2月17日にも第5便として65名が帰国しました。
チャーター機での帰国者は合計829名で、PCR検査は815名に行われ、このうち2週間以内に陽性が確認されたのは14名。うち7名が肺炎、3名が軽い症状で4名は無症状となりました。
国立感染症研究所の発表では、チャーター機による帰国者の陽性割合は50代から60代が多く、小児の割合は少なくなっていました。
世界中に広がるCOVID-19
新型コロナウイルスCOVID-19は良く人がかかる「風邪(かぜ)」と言われるものと同様のものであるため、普通の風邪と同様に非常に感染力が高いものです。そのためあっという間にヒトからヒト、モノを介すなどして広まっていきました。
2020年6月18日現在、世界全体で187ヵ国で感染が報告され、821万人以上が感染、44万人以上が命を落としています。
WHOは2020年に入り、世界中の多くの国々に感染が広がっていくのを見て、3月11日にパンデミック相当であると表明しました。
このパンデミック宣言は、感染拡大のスピードから見ると非常に遅い発表になったため、世界各国からWHOへの批判が起こりました。
これを受け欧米各国では「ロックダウン(首都封鎖)」を発令し、外出禁止などの処置を下しました。国によっては外出禁止を守らない場合罰金を科すなど厳しいルールを敷いた国もありました。
著名人の死が警鐘を鳴らす
新型コロナウイルスに感染し重症化する人が報告されるようになり、死者も多く報告されるようになりました。海外では日本と比べ多くの感染者と死者が報告されています。このような状況下でも、一般の間ではさほど脅威と感じていない人たちも多くいるようでした。
そんな中、相次いで著名人の死がニュースになります。
国民的なお笑いタレント「志村けん」さんが3月29日に亡くなり、女優や司会者として活躍していた「岡江久美子」さんが4月23日に無くなりました。角界では高田川部屋の勝武士幹士(しょうぶしかんじ)さんが28歳の若さで5月13日に亡くなりました。いずれも新型コロナウイルス感染症が原因とされています。
身近に感染者がいないため、自分達とは縁遠い事に感じていた人々の多くが改めて感染症の恐ろしさを認識することとなる出来事となりました。
日本の緊急事態宣言と給付金
メディアによりクルーズ船での感染拡大が大きく報道され、日本でも政府から様々な活動の自粛や学校へは2020年3月2日から春休みまで臨時休校とするよう休校要請などが出されました。
これにより、小さな子供を持つ親は会社を休まざるを得ない状況に陥り、政府は休業補償の枠を拡大し、新型コロナウイルス感染症の影響による休業に対する補償を行いました。
4月7日になり、日本政府は緊急事態宣言(非常事態宣言)を発令します。学校を休校にしたことで、国民のマインドは一気にマイナス方向へ進みます。今までの社会のバランスが崩れてしまったため今度はあらゆる方面から早く緊急事態宣言を出してほしいとの声が上がるようになったのです。このマインドの変化により政府の対応が遅いとの非難の声が上がるようになります。
緊急事態宣言後は、企業活動だけでなくあらゆる分野への活動自粛が要請され、経済が大きく減速します。中小企業など内部留保の少ない企業はひとたまりもありません。そのため政府は給付金や特別な融資の制度を用意し緊急経済対策を行う事になります。
売り上げが落ち込んだ中小企業に対する給付金は国、県、市などからそれぞれ自治体ごとに決められた枠組みで支出されました。
2020年4月20日には「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」が閣議決定され、特別定額給付金事業が実施されることになりました。これは個人に対する給付金として全国民に10万円が支給されるものです。給付金などについては閣議決定前の情報がメディアなどで騒がれ、一時30万円支給などの情報も出回り、国民の不満にもつながりました。
緊急事態宣言は当初5月6日までの1か月とされていましたが、5月25日まで延長され、この日をもって全面的な解除になりました。
医療現場の混乱
1月に日本で最初の患者が報告されて以来、日に日に増える感染者数。日本だけでなく世界中で増加していきました。そしてクルーズ船の乗客らを隔離するために税務大学などを隔離施設として利用していた頃から医療現場の混乱が報道されるようにもなりました。
新型コロナウイルス感染症は重病化すると死に至るケースが相次いで報告されるようになりました。日本国内で陽性患者を受け入れている病院の病床数とICU(集中治療室)の数が非常に少ないため、感染者の増加数を見れば病床だけでなく、医療従事者、医療器具、備品などあらゆる医療資源が足りなくなるのは誰でも予想がつく状況でした。
日々マスコミで発表される人数は氷山の一角という見方も強く、IT業界では厚生労働省からのデータだけでなく、医療現場や関連団体、企業らが現場から直接得たデータもリアルタイムで表示できるように「新型コロナウイルス対策ダッシュボード」が展開され、都道府県ごとの管理はITスキルのある団体によってボランティアで管理されています。
「COVID-19 JAPAN:新型コロナウイルス対策ダッシュボード」
マスク不足によるマスク配布
新型コロナウイルス感染症の拡大が始まった頃、薬局などの棚からマスクが姿を消しました。そして朝早くからマスクを求めて薬局の前には長蛇の列ができ、その光景が民衆の危機感をあおり、さらなるマスク不足に繋がっていきました。
これにより国民にマスクが届かない状況を見て日本政府は4月1日、一家庭につき2枚のマスクを配布することを表明しました。のちに「アベノマスク」と揶揄されるマスク配布です。1家庭に2枚だけのマスク。単価の高いマスクで、配布したものに瑕疵があり、その修正にまた費用を費やすなど多額の税金が投入されたことに不満の声も上がりました。これに関する不透明な業者選定も問題視されています。
マスコミによるミスリードと情報の錯綜
クルーズ船が国民の大きな話題となるころから報道は殆ど新型コロナウイルス感染症の話題になりました。多くのマスメディアで新型コロナウイルス感染症に関する様々な議論が行われる中、専門分野ではない医師らもテレビに駆り出され、知識のないコメンテーターに誘導され誤った情報が流れるなどして国民が混乱するという事態が多発しました。
また、SNSなどでもフェイクニュースが流れたり、余計な不安を煽るような情報が伝搬するなどして更なる混乱を生みました。
「ステイ・ホーム」からの自粛警察
様々なメディアで「ステイ・ホーム」の呼びかけが起こり、それに呼応するようにSNSなどでもハッシュタグをつけて拡散され、世の中に外出禁止の流れが出来上がりました。
店を開けている飲食店は嫌がらせを受け、公園で遊んでいる子どもたちは通報され、外出している人たちも世間からは白い目で見られるようになり、マスクをつけていない子どもが大人から怒鳴られるなど歪んだ正義感により人が人を追い込む状況が全国的に行われるようになりました。これらを「自粛警察」などと呼ぶようになりました。「自分たちも我慢しているのだから」という他の人をゆすれない気持ちが形になってしまったのです。
先の見えない飲食業
緊急事態宣言が出される中、自粛要請があらゆる場所に出されました。特に話題の中心にあるのが飲食店で、営業時間の短縮やテイクアウトへの変更などを余儀なくされ、売り上げも大幅に下落。店を閉める店舗も多く現れました。
緊急事態宣言が解除後も、イベントや宴会の自粛、会議のリモートワーク化などに伴い人の出がコロナ前の状況に戻るとは考えにくく、感染症の第2波、第3波の懸念などにより先が見えない中での営業が続いています。
既に外食へのマインドが低下してしまった人たちも多く、政府が求める「新しい生活様式」と飲食店営業との矛盾に頭を悩ませている店舗も少なくありません。
小売り、産業全体の動向
自宅で過ごすことが多くなり、スーパーの食品売り場は活況になっています。また自宅で出来る事として、家庭菜園や部屋の模様替え、リフォーム、庭の整備、キャンプなどの需要からホームセンターへの人気も集中し、増収増益が報告されています。
しかし、日用品や家具、衣料品の売り上げなどは大幅な減少が続いており、終わりの見えないウイルスとの戦いに、嗜好品への出費を控える動きが懸念されています。自動車産業や観光業など、様々なエリアで自粛による影響や先行き不安による消費の減少が今後も予想されています。
世界的な自粛の環境への影響
自粛の動きはもちろん日本だけでなくロックダウンなどを行った欧米諸国でも同様に行われていました。工場などの操業も停止し、道路には車の往来が無くなりました。観光地も閑散とし、観光業にも大きな打撃を与えました。
経済面で見るとその影響は多大なるものになりますが、一方環境面では良い面もあります。
下の写真はNASAとESAによる汚染監視衛星の写真です。左が1月1日~20日のもので、右が1月10日~25日の期間の二酸化窒素(NO2)の排出量を表したものです。二酸化窒素は自動車、発電所、産業施設から排出される有毒ガスで、ここまでの減少は過去にも例を見ないものになっています。
一方でスーパーでの買い物の増加や自宅で過ごすことが多くなると家庭から出るごみの量も増えてきます。自粛中の片付けなどでゴミが沢山出て、行政によるごみの回収業務が遅れたり、リサイクルセンターやゴミ処理場がパンク状態になるなどの「ゴミ問題」も浮上しました。
東京オリンピックは延期
新型コロナウイルス感染症の拡大により、日本が抱える心配事の1つに東京オリンピックの開催があります。
2020年に入るとオリンピックに向けた予選会や選手を決める大会が世界中で行われるようになります。しかし今回の感染症拡大を受け、その大会が軒並み中止に追い込まれるようになりました。
このような状況の中、2月27日の段階でIOCのバッハ会長は緊急の電話会議で大会を予定通り開催すると明言します。
3月11日、WHOによるパンデミック宣言が行われても、まだオリンピックの予定通りの開催を明言していました。
しかしながら代表選手を日本に送り込む各国の首脳からは延期の声が上がるようになり、相次ぐ大会の中止で十分な準備が整わない選手団からも延期の声が上がるようになりました。
IOCはこの状況を受け、日本だけの問題ではなくなったとの認識の中、3月30日に臨時理事会を開催し、東京オリンピックの1年程度の延期を決定し、2021年7月23日から17日間で開催し、パラリンピックは2021年8月24日から13日間での開催という日程に変更になりました。
新しい生活様式
緊急事態宣言が敷かれている5月4日、その解除に向け政府は「新しい生活様式」を発表しました。有効なワクチンなどが無い中、それでも経済活動や日常を取り戻さなければならないため、ウイルス感染症と共存するために一人一人が気を付けながら生活していくというものです。
内容は、こまめな手洗い・うがい、「密集、密接、密閉」のいわゆる3密の回避など基本的な生活の変化を求めたものになります。
また人との距離を保つソーシャルディスタンス(人と人との距離を保つ)などの心得などがまとめられています。
リモートワークとデジタル社会の加速
濃厚接触を避けるため、政府が新しい生活様式の中で挙げているソーシャルディスタンス。3密を避けるために職場や各種団体活動など様々なエリアで取り入れられています。
既に今までもIT業界などではリモートワークは浸透しつつありました。世界のトップ企業などにも導入されていて、リモートワークに必要なものは全てそろっていたのです。しかしながら先進国でもIT化が非常に遅れている日本ではあまり利用されていなかったものです。
今回の新型コロナウイルス感染症は「リモートワーク」や「オンライン○○」を加速させました。
ノートパソコンさえあれば、無料のシステムを使って誰でもオンラインでの会議に参加することが出来き、政府も民間に対しリモートワークへのシフトを要請していたため、企業としても従業員に説明しやすいものになりました。
会社にコンピュータがあってもカメラやヘッドセットが無い中小企業も多く、量販店の在庫はすべて売り切れ、輸出入の動きも鈍いため商品の入荷が無く手に入らない状況が続きました。
テレビ局の放送などもタレントやアナウンサーが別の部屋から中継したり、自宅から収録に参加したりと、4画面6画面と分割された放送が増えるようになりました。
民間の間では外出の自粛期間に友人らとコミュニケーションを楽しむ場として利用されたり、団体の会議などにも積極的に導入されるようになりました。
また、学校・教育機関へのリモートの導入も検討され始めました。大学・高校などはいち早くリモートの授業に切り替えたものの、公立の学校や若年層へのリモート導入は難しく、新しい教育の形が求められるようになっています。
社会構造の変化が「人」を浮き彫りにする
学校が休みに入り、会社はリモートワークになり、お店はクローズし飲食店はテイクアウトになるなど今までの社会が大きく変化することで人の素行が浮き彫りにされることになりました。
このような社会の変化により、子どもとの時間が沢山取れるようになったため、遊びや勉強を一緒にすることでより良い関係を築くことができたようです。しかしある家庭では、子どもが仕事の邪魔をしてくることにストレスを感じ、その子供への対応が家庭不和を生むケースなども報道されていました。普段家にいなかった人が家にいることで余計な事も見えてきてしまいストレスを抱えるなどもあるようで、この時期「コロナ離婚」などの言葉も生まれました。
リモートワークを取り入れた企業はかなり多く、緊急事態宣言解除後もリモートワークが主体となった企業も沢山あります。オフィスを縮小する企業なども現れたところを見ると、自粛期間中にもいろいろ試行錯誤を行い、より効率的な働き方へとシフトしたのだと思います。
例えばこんな話もあります。あるIT企業では随分前からリモートワークが中心で動いているはずでした。全社員ノートPCやスマートフォンが配布されているため、チーム内の連携も撮れているはずでした。ところが今回あらゆる部署や顧客とすらオンライン会議を行う事になり、実際にはうまく使いこなせていなかった事が発覚したりしました。
更に、リモートワークでも売り上げが落ちないことが分かると、このリモートワークに参加していない人たちは要らないのではないかという疑念なども生まれ、今後社内の組織図や体制も大きく変化していく事が予想されます。
つまり、いろいろごまかして仕事をしていた人たちや要らない人があぶりだされてしまったのです。
ウイルスとの長い戦いは始まったばかり
緊急事態宣言が解除されたばかりの今、私たちはまだ未知のウイルスとの闘いの序章に立っているのだと思います。1月からこの6月までの半年間、振り返ってみるとウイルスに対する人々の立ち振る舞いは果たして正しかったのでしょうか。
当面先になるワクチンの実用化、新しい生活様式と言いながら何も変わらない仕組みのまま再開された学校。東京に集中する企業とそこに密集する労働者。本当に必要としている人に届かない給付金。マスクの供給が安定してから届く政府からのマスク。
自分たちが作った社会構造の根幹から考え直さなければ、今後現れる新しいウイルスや自然災害などの天変地異に対応できないでしょう。
【参考文献・サイト】
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