地表面を観測することで地球環境の変化を予測
だいち2号(ALOS-2:Advanced Land Observing Satellite 2)は、地球の主に地表面部分で起こる森林分布の変化や、洪水、地震、火山噴火、土砂崩れなどの災害における環境変化を観測している人工衛星です。
世界的に見て災害の中でも「洪水」は圧倒的に発生率が多く、近年日本ではゲリラ豪雨などにより甚大な被害をもたらすような洪水が多発しています。これらを観測し、その環境の変化を読み解くことで、未来における甚大な被害を未然に防ぐ事にもつながるデータを蓄積するためにだいち2号が役立っています。
合成開口レーダーを搭載
従来の人工衛星のように地球外から地球を観測する際に、高解像度の光学式のカメラなどを使って地球表面を撮影し、その変化を記録する方法だと雲や火山の噴煙などに遮られてその地表の様子の撮影が困難な場合があります。合成開口レーダー(SAR:Synthetic Aperture Radar)は光学式と違い地表に向けて電波を送受信する事によりその形状などを再現します。
だいち1号(ALOS-1)では光学式と合成開口レーダーを搭載していましたが、その結果SARを搭載することで更に詳細なデータが取れることがわかったため、だいち2号(ALOS-2)では合成開口レーダーの性能を更に高精度にしたPALSAR-2のみを搭載し、より緻密なデータを地球に送信しています。
多くの結果を残している「だいち2号」
だいち2号は2014年5月25日に打ち上げられ最大7年の運用を目標にしていましたが、2022年6月現在でも稼働しています。その功績は様々で、打ち上げ後すぐに発生した2015年4月のネパール地震の際には災害状況の把握に役立つ事がわかり、同8月の桜島の噴火状況については、通常火山活動を探るために設置されているGPSなどでは、その地点での地表の変化しかわからないところ、宇宙から広範囲を観測するだいち2号は、火山の噴火中どの範囲がどれくらい移動しているのかなどより詳細なデータが取得できます。長く火山活動によりその地形を変化させている西之島などは、だいち2号によってより詳細な変化がSARデータによりわかります。
このように数々の成果を上げている「だいち」はすでに後継機としてALOS-3、ALOS-4の開発が決まっています。
今後さらにこれらデータの活用範囲が広がることで、自然環境変化による未来の地球への影響の分析が可能になり、私達人類と地球がどのように共存していくべきかのヒントを与えてくれることでしょう。