再生可能エネルギー買取価格制度(FIT)
太陽光発電、風力発電、水力発電、地熱発電、バイオマス発電などから得られた電力を再生可能エネルギーと呼びます。これらで発電した電力を電力会社が一定価格で一定期間買い取ることを日本政府が約束する制度を固定買い取り制度といいます。
FITの仕組み
一般的な例でFITの仕組みを見てみます。下のグラフは左の緑色が太陽光発電で一般家庭で発電した電気を電気事業者に販売する「売電」です。右のオレンジが通常私たちが電気を利用する際に購入する電気料金です。
左を見ると買取価格24円に対して、とある電気販売会社の販売価格は23円です。この電気会社は電気を売れば売るほど「1円」ずつ損をしていることになります。東電の深夜電力と比較してしまうとその差はもっと開きます。
日本では現在再生可能エネルギーを推進しています。そのため太陽光発電などの再生可能エネルギーで発電した電気については高い金額で買い取ろうという仕組みになっています。買取がスタートした2009年ごろは一般家庭からの買取価格は48円/kWhと今の倍以上の金額になっていました。
しかし、ずっとこのような金額での買取は不可能です。そのため、再生可能エネルギーをなるべく早い段階から促進させるためにも、徐々に買取価格を下げていきました。それでも差額がマイナスになるわけですが、この分はどこかで穴埋めしないといけません。
再エネ賦課金(ふかきん)でカバーしている!
この差額分を埋めるために「再生可能エネルギー発電促進賦課金」で賄っています。誰が支払っているかというと、一般の皆さんです。この制度が始まってから電気料金の基本料金とは別に一定の価格でこの賦課金を支払う事になっています。これは、電気料金の明細を見れば分かります。下の図のように記載されています。
例えば1か月に100kWhの電力を利用したとしたら、298円の賦課金を支払います。4人家族の1日当たりの平均電気使用量は13.1kWhと言われていますので、30日で計算すると、4人家族だと月額1,171円程度負担していることになります。
FIT買取価格の推移
以下は、一般家庭などから太陽光発電による電力の買取価格の推移です。データは2012年からのものです。2015年からは地域により太陽光発電システムに対する出力制御機器対応の義務化が始まったため、その対応をしたエリアとそうでないエリアで買い取り価格が変わっています。
ダブル発電は、エネファームやエコウィルなどのように、自宅に導入した設備により太陽光以外でも発電を行っている場合がこれにあたります。蓄電池の設置や電気自動車から家庭に電気を戻す仕組みなどがある場合もダブル発電にあたります。
ちなみに太陽光発電の固定買い取り価格の期間は10kWh以上で20年、10kWh以下で10年固定となります。
年度 | 10kW以上 | 10kW未満 (制御機器対応あり) |
10kW未満 (制御機器対応なし) |
10kW未満 (ダブル発電) |
10kW未満 (ダブル発電) |
2012 | 40円+税 | 42円 | – | 34円 | – |
2013 | 36円+税 | 38円 | – | 31円 | – |
2014 | 32円+税 | 37円 | – | 30円 | – |
2015年4月~6月 | 29円+税 | 35円 | 33円 | 29円 | 27円 |
2015年7月~翌3月 | 27円+税 | 35円 | 33円 | 29円 | 27円 |
2016 | 24円+税 | 33円 | 31円 | 27円 | 25円 |
2017 | 21円+税 | 30円 | 28円 | 27円 | 25円 |
2018 | 18円+税 | 28円 | 26円 | 27円 | 25円 |
2019 | 14円+税 | 26円 | 24円 | 26円 | 24円 |
このようにFITの買取価格は年々下がってきています。買取価格が下がってきている背景には、太陽光発電システムの普及が進み多くの家庭や企業に導入が進んだ事や、太陽光パネルやそのシステムの導入コストが年々下がってきていることなどがあげられます。
FITの今後と家庭のエネルギー活用
既に買取価格はとても低いものとなっているため、太陽光パネルを設置して売電で稼ごうという考え方は消えつつあります。政府も2025年までに段階的に買取価格を7円まで下げていくと公表しています。
FITが終了しても太陽光発電を導入するメリットはあるか?
結論から言えば「大いにある」と言えます。それは日本はエネルギーを輸入している国であり自給率がとても低い事に起因します。電気料金はこれからも上がっていくと予想されています。それは需要が大きくなっているのと、先にも挙げた通り、火力発電中心の日本ではその燃料は他国から輸入せねばならず、化石燃料の価格が上がると電気料金に直接跳ね返ってきます。
これらを回避するためにも、国のエネルギー自給率を上げるというよりも、自宅でのエネルギー自給率を挙げていく事が重要になってきます。そのためにもある程度日照の良いエリアでの太陽光発電の搭載は現在ある再生可能エネルギーを一般家庭で手に入れるための最も手ごろで効率的な手段と言えます。
太陽光発電と蓄電池の併用は有効!
自給率を上げるうえで重要なのが太陽光発電と家庭用蓄電池との併用です。これは自宅で電気を利用する時間帯が日照時間とはずれているからです。
日中、あまり電気を使わないときには太陽光パネルから充電し、その電力を夜の為に取っておきます。天候が悪い場合は電力会社から電気を購入しますが、太陽が出ている時には自宅のエネルギーを極力電力会社から購入しないようにします。
場合によっては深夜電力なども活用し、嵐や天候が悪い時には電気の利用が少ない深夜電力を活用し蓄電池を充電することで、電力消費のピークを避け、エネルギーコストも下げる事ができます。
蓄電池は災害時、系統からの電力が絶たれた場合にも電力供給できるため、災害への備えとしても重要です。
FITが終了しても自宅のエネルギー確保のために再生可能エネルギーの活用をみんなで考えていく事でエネルギーの節約につながるというものです。
10年間の固定買い取り終了後は再買取もある
10年間の固定買い取り期間が終了したのちは、旧一般電気事業者(東電など)による買取以外にも多くの企業が電力の買取に参集しています。詳しくは以下の関連記事をご覧ください。